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確定申告を忘れずに

確定申告を忘れずに


不動産売却をした際には、確定申告が必要になる場合があります。

確定申告とは、1年間(1月1日〜12月31日)に得た『所得の合計金額を税務署に申告し、所得に応じた税金を納税する手続き』のことをいいます。

年に1回行うもので、申請時期は毎年2月〜3月中旬、現住所を管轄とする税務署に申告します。

法人で働いて得た給与の場合は、会社側が年末調整を行ってくれますが、不動産売却で得た利益(譲渡所得)については、売主自身が確定申告の手続きを行わなくてはなりません。


不動産売却後に確定申告が必要かどうか判断するにはどうすればいいのか、確定申告が必要な場合はどうすればいいのか、詳しく説明していきます。



不動産売却後に確定申告が必要な場合


不動産売却後、以下のいずれかに該当する場合、確定申告をする必要があります。

逆に、これらに当てはまらない場合は確定申告をする必要はありません。


  • 1.不動産売却によって『売却益』が発生し、所得税を支払う必要がある
  • 2.不動産売却によって『損失』が発生し、損失額の分だけ所得税の控除を受けたい。

それでは、それぞれの状況について、詳しく見ていきましょう。


1.不動産売却によって『売却益』が発生し、所得税を支払う必要がある場合

不動産売却後に『譲渡所得』が発生する場合は、確定申告を行う必要があります。

『譲渡所得』とは、不動産売却による収入から、不動産の取得や譲渡にかかった費用(取得費や譲渡費用)を差し引いた金額のことをいいます。

下記のような計算式で計算することができますので、譲渡取得を確認し、プラスになる場合は確定申告を行いましょう。


■譲渡所得=収入金額ー購入金額ー(取得費用+譲渡費用)ー特別控除額


2.不動産売却によって『損失』が発生し、損失額の分だけ所得税の控除を受けたい。

不動産売却によって発生するのは利益ばかりではありません。損失が発生してしまった場合、一定の要件を満たせば『損益通算(その他の所得と相殺して所得税を減らす方法)』ができます。

『損益通算』の手続きには『還付申告(税金を払い戻すための確定申告)』をする必要があるため、希望する場合は確定申告の手続きを行わなくてはなりません。

『損益通算』の中でも、その年の取得で相殺できない場合は、申請をすることで、譲渡の翌年以降、最長3年間、損失を繰り越すことができます。これを『繰越控除』といいます。

この『繰越控除』の申請には国税庁が定める条件を満たしている必要があるので、注意しましょう。


・マイホームを売った年の前年から3年間で新しいマイホームを取得した際に、一定の条件に該当する場合。

・マイホームの譲渡契約締結日の前日において、一定の要件に該当する場合


詳しくは国税庁のHPからもご確認ください。


参考リンク|国税庁|よくある税の質問


確定申告をしないとどうなるのか


売却の直後は引っ越しなどもあり、確定申告は時期が2月〜3月中旬と決まっているため、期間が空いてしまうと忘れてしまいがちです。

しかし、確定申告をしないと、罰金を課せられたり税金を余分に支払うことになるので、注意しましょう。


■罰金が課せられる

譲渡所得があるにもかかわらず、期限に遅れて申告した場合、罰金(無申告加算税と延滞税)が課せられます。

無申告加算税は納付する税額に対して、下記のように決まっており、本来の税額とは別に納税する必要があります。


50万円以下の部分税額の15%
50万円を超える部分税額の20%

■余計に税金を支払うことになる

譲渡損失がある場合は罰金が課せられることはありません。しかし、損失分が控除されない状態で翌年の所得税を余分に支払うことになります。

不要な納税を避けるために、損益通算の適用要件を確認し、適用できる場合は忘れずに申請しましょう。


特に不動産の売買は扱う金額が高額になるため、税金も高くなります。余計な出費を避けるためにも確定申告は忘れずに行いましょう。


不動産売却後の確定申告の方法


確定申告には個人で行う方法と、税理士に依頼する方法の2つがあります。


■個人で行う場合

個人で申請書類の手配をし、税務署または確定申告の時期に市区町村の庁舎に設置される臨時会場で手続きを行うことができます。

確定申告の時期には税務署や庁舎などで、税理士による無料相談所が設けられています。一人での申請が不安な場合は相談をしてみると良いでしょう。


■税理士に依頼する場合

確定申告の際の税理士報酬は各事務所によって異なりますが、相場は10万円〜20万円と言われています。不動産の売却価格や特例の有無によっては料金が変動しますので、詳しくは直接、税理士事務所に相談をすると良いでしょう。


不動産売却後の確定申告の流れ


不動産売却後の確定申告の流れはこのような順番になっています。


  • 1.書類の準備をする
  • 2.譲渡所得税を計算する
  • 3.書類に記入をする
  • 4.税務署に申請をする
  • 5.納税、または還付を受ける

それぞれの工程を詳しく見ていきましょう。


1.書類の準備をする

基本的に、確定申告には次の6つの書類が必要になります。

書類に漏れがあると税務署から問い合わせがある場合がありますので、全て揃えるよう注意してください。

書類は税務署の窓口や、国税庁のホームページからダウンロードすることで入手できます。


■確定申告に必要な書類一覧


書類名

内容

入手場所

確定申告書第一表、第二表(B様式)個人事業社や土地・建物を売った人などが使用する申告書類税務署
申告書第三表(分離課税用)土地・建物の譲渡などの給与所得とは分離して課税される場合には必要な申告書類税務署
譲渡所得の内訳書(土地・建物用)売却した不動産に関する情報(所在地、面積、売却金額など)を記入する書類税務署
売買契約書のコピー不動産を購入した際の不動産売買契約書と不動産を売却した際の不動産売買契約書、それぞれのコピー不動産売却時に締結したもの
紛失した場合は不動産会社に問い合わせる
建物・土地の登記事項証明書売却した不動産の登記事項証明書法務局
領収書取得費用と譲渡費用の証明書として使用不動産の売却時に入手したもの
紛失した場合は不動産会社に問い合わせる

2.譲渡所得税を計算する

譲渡所得税は下記の方法で計算することができます。


■譲渡所得税=[売却価格ー購入価格ー(譲渡費用+取得費用)ー控除額]×税率


■譲渡費用の例

  • ・不動産売却時の仲介手数料
  • ・売主が負担した印紙税
  • ・家屋を明け渡してもらう際に支払う立退料
  • ・売却する土地に建っている建物の取り壊し費用や建物の損失額
  • ・違約金
  • ・名義所換料 など

■取得費用の例

  • ・不動産の購入代金
  • ・建物の建築費用
  • ・登録免許税、印紙税、不動産取得税
  • ・建物解体費用
  • ・測量費用
  • ・設備費用
  • ・減価償却費(※建物の場合のみ) など

※建物のように時間の経過によって価値が減少する資産には、価値が減少した分の金額を差し引く『減価償却』という計算が必要になります。

減価償却については下記の記事にて、詳しく紹介しています。


関連リンク|売却前に知っておくべきこと【売却に関わる税金】


■控除額について

居住用の不動産を売却する際、3,000万円特別控除を利用することができます。

控除額は一人につき最大3,000万円なので、夫婦の共有名義で物件を所有している場合、合計で6,000万円まで、控除を受けることができます。


課税譲渡所得(=売却価格ー購入価格ー譲渡費用ー取得費用)が3,000万円以内の場合、譲渡所得税は全額免除となります。


■税率について

税率は『不動産の所有期間』によって変わるので注意しましょう。

・不動産を売却した年の1月1日時点で所有期間が5年以下なら『短期譲渡所得』となり、所有期間が5年を超えている場合は『長期譲渡所得』となり、税率は異なります。


所得税住民税
短期譲渡所得
(所有期間5年未満の場合)
30%9%
長期譲渡所得
(所有期間5年超の場合)
15%5%

・不動産の所有期間が10年を超える場合は、軽減税率が適用されます。これは3,000万円特別控除と併用が可能です。


所得税住民税
6,000万円以下の部分10%4%
6,000万円を超える部分15%5%

3.書類に記入をする

確定申告書の記入は国税庁のホームページに開設されている『確定申告書作成コーナー』を使用すると良いでしょう。

画面の案内に従って入力していけば、自動で納税額を計算してくれるため、簡単に確定申告書が作成できます。

記入方法に不明な点があれば、確定申告書作成コーナーの問い合わせ窓口に掲載されている電話番号から相談することも可能です。


関連リンク|国税庁|確定申告書作成コーナー


4.税務署に申請をする

確定申告書の提出先は『納税地の税務署』になります。

期日は2月中旬〜3月中旬が基本ですが、その年によって細かな日程は変化するので、税務署や国税庁のホームページなどから日程を確認し、納期に遅れないように提出しましょう。

提出方法は下記の3つになります。


  • ・郵送で所轄の税務署に送る
  • ・所轄の税務署へ直接持参する
  • ・国税電子申告・納税システムを使ってオンラインで申告する

5.納税、または還付を受ける

納税が必要になった場合は申告時期と同じ2月中旬〜3月中旬の間に納付します。

期限までに全額の納税が難しい場合は、半分以上の税金を納付期間内に納税すれば、残りの税金の納付期限を同年の5月31日まで延長できます。

ただし、延納した分については利子税がかかりますので、注意しましょう。


還付を受ける場合は、申告書に記入した金融機関の口座に還付金が振り込まれます。



確定申告には期日があり、遅れてしまうと余計な出費に繋がります。

特に、不動産売却は取り扱う金額が大きく、税金も高額となるため、注意が必要です。

申告に必要な書類も多く、揃えるために時間がかかりますので、期日ギリギリになって慌てないよう、売却が成立した時点で、契約書や領収書などは確定申告に必要なものとして、まとめて保管しておくと良いでしょう。


ここで紹介した特別控除や軽減税率について、ご自身の売却する物件が該当するのか、など、わからないことがあれば売却を依頼した不動産会社に相談をしてみるのも良いでしょう。

難しい案件の場合は税理士を紹介してもらうのも、確実に確定申告を行う一つの手段です。


売却後の忙しさで忘れてしまわないように、早めに準備をすることをおすすめします。


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