住宅ローンの残債について
長い時間を欠けて返済していく住宅ローンですが、完済するまでに転勤や親との同居、家族が増えた、収入の減少など、さまざまな理由から住み替えをすることはよくあります。
その際に、問題になるのが『住宅ローンの残っている住宅は売却できるのか?』という問題です。
結論からいうと、残債のある住宅でも売却は可能です。
しかし、気をつけなければいけないことがたくさんありますので、売却活動を始める前に確認をしておきましょう。
売却するには『抵当権抹消』の手続きが必要
住宅ローンの返済中でも住宅を売却することは可能ですが、買主に引き渡すまでに残債は全て返済し終えていなくてはいけません。
なぜなら、住宅ローンで購入した住宅には、金融機関から『抵当権』が付けられているためです。
『抵当権』とは、ローンを組む際の担保として、購入した住宅に付けられるもので、住宅ローンの返済が滞るなどした際に、金融機関にはその不動産を競売などで売却し、貸したお金を回収できる権利があります。
もし、『抵当権』が残ったまま売却してしまうと、万が一、売主がローンを滞納した場合、買主が住宅を失ってしまうことになってしまうのです。
ですので、買主に引き渡すまでに『抵当権抹消』の手続きをしなければなりません。
住宅ローンの現状確認をする
住宅ローンが残っている状態で売却をしたい場合、まずは残債がいくらあるのかを確認しましょう。残債をしらべるには、以下のような方法があります。
■金融機関から発行される『返済予定表』を見る
住宅ローンを契約すると金融機関から『返済予定表』が発行されます。
ローンの残高や 借入内容、返済予定日、ボーナスで返済する予定の金額、元金、利息など、の内訳まで詳しく確認することができます。
繰上げ返済などを行うと内容が変わってしまいますが、更新後の内容も確認できるようになっていますので、不明な場合は金融機関に問い合わせをしてください。
■金融機関から郵送される『残高証明書』を見る
毎年、10月〜11月中旬頃に金融機関から年末のローン残高を証明する書類が郵送されます。それが『残高証明書』です。
住宅ローン控除を受ける時に会社に提出する書類なので、見覚えのある方もいらっしゃるでしょう。
『残高証明書』に記載されているのはあくまで、直近の年末自転でのローン残高になりますので、大まかな残債額がわかるものだと思ってください。
ただし、『フラット35』でローンを組んでいる場合、あらかじめ郵送費用を支払い、毎年郵送してもらう手続きをしなくてはなりませんので、注意してください。
■金融機関のウェブサイトを見る
インターネットバッbキングやインターネットサービスに加入している場合は、ウェブサイトでも残債を確認することができます。
ただし、利用している金融機関によっては住宅ローンの残高照会がインターネットで行えない場合もありますので、あらかじめ、金融機関に確認をしてください。
売却したお金で完済できる場合
売却する住宅の売買代金よりも、住宅ローンの残債が下回る場合を『アンダーローン』といいます。
『アンダーローン』の場合は順を追って手続きを行えば問題なく売却をすることができます。
手続きの大まかな流れは下記のようになります。
- 1.売却の際の費用がどのくらいかかるのか、確認をする。
- 2.不動産会社と媒介契約を結び、売却活動を開始する。
- 3.買主が見つかれば、売買契約を交わし、決済と抵当権抹消手続きを行う。
先に説明をしましたが、本来は住宅ローンが完済されなければ住宅の売却はできません。
しかし、売主と買主、各金融機関のローン担当者、司法書士が同席することで、ローンの完済と売却を同時に成立させることができます。
手続きの流れは下記のようになります。
- 1.司法書士が、売主がローン完済後には住宅が買主の者になるという登記申請書類の確認を行う。
- 2.金融機関により買主への融資が実行され、売主の口座に売買代金が振り込まれる。
- 3.売主は売買代金によって、ローンの残債を完済する。
- 4.司法書士が抵当権抹消登記と所有権移転登記を行う。
以上で、住宅の売買、および住宅ローンの完済は完了です。
不動産の売買ではよくあることですので、不動産会社に相談すれば、司法書士や金融機関への連絡も行ってくれるでしょう。
売却してもローンが残ってしいまう場合
売却する住宅の売買代金よりも、住宅ローンの残債が上回る場合を『オーバーローン』といいます。
住宅の価値は購入直後から年数が経つほどに下がってしまうものですので、売却してもローンが残ってしまうことは珍しいことではありません。
ここで問題となるのは、売却代金を差し引いてどのくらいの残債があるか、足りない金額をどのように支払うのかという点です。
オーバーローンの場合の支払い方法には、下記のような3つの方法があります。
■貯蓄などで残債を完済する
残債があっても手持ちの資金で返済が可能であれば問題はありません。
しかし、残債の返済以外にも住宅の売却には必要な費用がさまざまありますので、その分の資金が残るように、計算をした上で支払いを行うようにしましょう。
また、もしも足りない金額を親戚などに用立ててもらう場合は借用書を残しておきましょう。
これは、もらったお金だとみなされてしまうと、贈与税が発生する場合があるためで、返済の意志があることを示すためにも、借用書は重要になります。
■住み替えローンで次のローンと一体化する
住宅の売却理由が住み替えなどで、新居を購入する場合、新居の住宅ローンに返済中の住宅ローンを一体化してまとめることができます。
これを『住み替えローン』といいます。
『住み替えローン』には下記のようなメリットとデメリットがありますので、事前に確認をしておきましょう。
メリット | ・貯蓄に手をつけることなく住み替えられる |
デメリット | ・融資額が大きくなるので、審査が通りにくい ・住宅ローンの金額が増えるので、月々の返済などの負担も大きくなる |
また『住み替えローン』の場合、売却する住宅の抵当権抹消と購入する新居の抵当権の設定を同時に行わなければならない、という条件があり、スケジュールの面での調整が厳しいという難点があります。
もし、このタイミングが合わなかった場合、融資の審査に通っていても、利用できなくなってしまうので、注意が必要です。
融資が受けられるのか、スケジュールを合わせることは可能なのか、まずは不動産会社に相談をしてみることをおすすめします。
■『任意売却』を利用する
毎月のローン返済が難しくなった場合『競売』か『自己破産』しかないと思われがちですが、自己所有の住宅の債務には『任意売却』という方法を利用することができます。
『任意売却』の場合、残債を一括で返済ができない状況でも不動産会社に売却を依頼することができます。
ただし『任意売却』の利用には借り入れている金融機関から『任意売却』に応じてもらう必要があり、売却する住宅に市場価値があるなど、条件が会わなければ応じてもらえない可能性もあります。
その他『任意売却』には下記のようなメリットとデメリットがありますので、よく理解して利用を検討しましょう。
メリット | ・住宅ローンの滞納したことを周囲に知られにくい ・競売よりも相場に近い価格で売却できる可能性がある ・残債を一括ではなく分割で支払うことができる ・諸費用を現金で用意しなくてもいい |
デメリット | ・滞納した記録が信用情報期間に残るため、今後融資を受けにくくなる場合がある ・競売よりも売主自身でやることが多く、手間と時間がかかる ・債権者と連帯保証人の合意が必要になる ・最終的に競売になってしまう可能性がある |
『任意売却』はいわば、最後の手段の一つです。
『任意売却』を検討する前に、まずは資金繰りを軽くする方法を検討する方が懸命でしょう。
例えば、ローンを借り換える、返済期間を長くする、賃貸に回すなど、返済が厳しくなって来たら余裕のある内にどのような対策が可能か、検討することをおすすめします。
住み替えは『売却優先』がおすすめ
住宅を住み替える場合『今の住宅を売却してから、新居を購入する=売却優先』の方法と『新居を講習してから、今の住宅を売却する=購入優先』の2つの方法が存在します。
どちらを選ぶかによって、売却の流れや資金計画が異なってきますので、それぞれのメリットとデメリットをよく理解して売却を進める必要があります。
売却優先 | 購入優先 | |
メリット | ・売却金額が確定し、購入資金に当てられる金額がわかるため、購入時の資金計画が立てやすい。 | ・希望に合う物件をじっくり探すことができる。 ・仮住まいなど無駄な費用が発生する可能性が低く、引っ越しがスムーズ。 |
デメリット | ・希望の物件が見つからない、あるいは入居できない場合、仮住まいが必要になる。 | ・売却物件に住宅ローンが残っている場合、新居の住宅ローンと合わせて二重に支払わなければならない場合がある。 |
売却する住宅に住宅ローンが残っている場合『売却優先』で住み替えを進めた方が二重ローンになることを回避できますし、資金計画が立てやすく、売却活動にゆとりをもって取り組めるでしょう。
ですが、もし、売却する前に『どうしても欲しい、運命的な物件』に出会ってしまった場合は購入先行で住み替えを進めるしかありません。
『売却優先』と『購入優先』どちらで住み替えを進めても無理のない資金計画が立てられるように、不動産会社によく相談をすることをおすすめします。
『つなぎ融資』という選択肢
『つなぎ融資』とは、住み替えの際に購入と売却のタイミングにズレが生じた場合、住宅が売れるまでの期間だけお金を借りることができる融資制度です。
融資の流れとしては下記のようになります。
- 1.『つなぎ融資』を受けて新居を購入する
- 2.売却する住宅の売却活動を行う
- 3.住宅が売れたらその売却代金で『つなぎ融資』を一括返済する
このように『つなぎ融資』を使えば住宅ローン返済中でもスムーズに住み替えをすることができ、仮住まいを用意したり、引っ越しを2回する必要もありません。
しかし『つなぎ融資』には下記のようなデメリットがありますので、十分な検討をした上で利用するか決めましょう。
- ・住み替えローンよりも金利が高いことが多い
- ・手数料や保証料などの諸費用が余分にかかる
- ・融資の期間は6ヶ月〜1年以内に限定されることが多い
- ・ほとんどの『つなぎ融資』は不動産会社の『買取保証制度』とセットになっていることが多く、期日までに買主が見つからない場合、不動産会社が査定価格の8割程度の金額で買い取ることになる。
こういった理由から、売却を焦ったり、買取りになるなどして売却代金が相場より低くなってしまい、損をすることや、ローンが返済しきれないという可能性もあります。
もし、売却する住宅が融資期限内に売れなかったらどうなるのか、など、さまざまな状況を想定して、融資を受けるべきか判断しましょう。
住宅ローンの残っている住宅を売却する方法はさまざまあります。しかし、不動産の売買は大きな金額が動くため、判断を間違うとローンの返済に苦労することに繋がります。
まずは住宅を売却することでローンを完済できるのか、完済できない場合はどうやって資金繰りをするのか、よく考えた上で行動しましょう。
不動産売買に関する融資制度のことなど、わからないことがあれば、まずは信頼のできる不動産会社に相談をすることをおすすめします。