不動産査定の方法と事前に確認するべき4つのポイント

不動産の売却をする際に、とても重要なのが売り出し価格の設定。
できるだけ高く、かつ、スムーズに売却を進めるためには不動産の相場や査定のポイントを知っておくことが肝心です。
この記事では不動産の査定はどのような方法と基準で価格が算出されるのか、事前に売主はどんなことに気をつければいいのかをご紹介していきます。
不動産査定とは?
不動産査定とは、不動産会社に所有している不動産の『販売適正価格』を見積もってもらうことをいいます。
不動産の売却は個人で行うには、買主を探すのが大変な上、さまざまな法的な処理や契約書の作成もあり、何より大きな金額がやり取りされるものですから、不動産会社に仲介を依頼することが一般的です。
不動産会社は売主から査定の依頼を受け、査定価格を売主に提示し、売主が査定額に納得することで、正式な媒介契約を結ぶことになります。
媒介契約を結ぶと、不動産会社は売主の代わりに売却活動を行って買主を探してくれます。
そして、不動産の売却が完了した際に、不動産会社は成功報酬として売主から仲介手数料を受け取ります。
この成功報酬以外は基本的に無料であることが多いため、不動産の査定のみであれば複数の不動産会社に相談をし、より良い査定額を提示してくれたり、担当者の対応が良かった会社を見極めて正式な依頼をすると良いでしょう。
不動産査定の2つの方法
不動産の査定方法には、2つの方法があります。それぞれの方法について、詳しくご説明していきます。
机上査定(簡易査定)
机上査定とは、現地に出向くことなく、売主から提供された不動産の立地や築年数などの情報を元に簡易の査定額を算出する方法です。
実際の不動産を見ている訳ではありませんので、不動産の周辺環境や住宅設備の不備などはわからないため、査定の制度は低くなります。
一戸建ての場合はとくに、それぞれの不動産ごとの現況に差異が大きく生じるため、正確な価格を出すのは難しいですが、都心のマンションなどは似たような条件の物件も多く、売却 の前例とも比較しやすいことから机上査定でも正確な価格を算出できることも多いです。
売却活動の準備段階として、おおよその査定価格を知っておきたいという方はまず、この机上査定(簡易査定)を不動産会社に依頼してみると良いでしょう。
訪問査定(詳細査定)
訪問査定は実際に現地に足を運び、不動産の周辺環境や劣化具合、住宅設備の状況などを細かく確認して行う査定です。
訪問査定は机上査定と合わせて行われ、不動産の立地や築年数などから算出される相場の価格に、不動産の現況を総合して査定額を算出します。
机上査定が依頼した当日や翌日と、早くに結果がわかるのに対して、訪問査定は1週間程度の時間を要する場合がありますので、売却活動のスケジュールはゆとりを持って組みま しょう。
具体的に不動産の売却を考え始めたら、机上査定ではなく訪問査定を依頼するものと思っておくと良いでしょう。
不動産の売却査定額の決まり方
不動産の売却査定額は3つの手法を組み合わせて算出されます。
それぞれが、どのような手法で、どういった特徴をもつ手法なのか、詳しく説明していきます。
取引事例比較法
取引事例比較法とは、売却する不動産を条件の近い不動産が、過去にどのような価格で売却されているのか、取引事例を比較する方法で、土地やマンションの査定に使われること が多い方法です。
比較対象として選んだ事例の不動産の平均坪単価を算出し、算出した単価に売却する不動産の坪数を掛け合わせ、その金額を基準にして、売却する不動産の立地条件や間取り、築年数などの個別の特徴を考慮して査定額を算出します。
例えば、売却したい土地A:50坪の周辺に下記のような売却事例があったとします。
土地価格 | 坪数 | 平均坪単価 | |
---|---|---|---|
土地B | 700万円 | 40坪 | 17.5万円/坪 |
土地C | 1,000万円 | 64坪 | 15.625万円/坪 |
土地D | 500万円 | 25坪 | 20万円/坪 |
これらの売却事例、B、C、Dから、平均の坪単価を算出すると、約17.7万円/坪となり、売却したい土地Aの査定額は下記のようになります。
■土地A:50坪 × 17.7万円/坪 = 885万円
原価法
原価法は売却したい不動産の建物部分を取り壊して、同じ建物を再建築した場合にいくら費用が掛かるかを仮定して再調達価格を算出し、その価格から建物の老朽化分だけを差し引いて減価修正を行うことで算出する査定方法です。
主に、一戸建ての建物部分の査定に利用されることが多い方法です。
原価法の計算式は下記のようになります。
■原価 = 再調達価格 × 延床面積 × 原価修正(残耐用年数 ÷ 耐用年数)
再調達価格と法定耐用年数は建物の構造によって異なり、また、再調達価格は業者によっ て異なりますので、注意が必要です。
それぞれの建物の構造による、法定耐用年数は下記の通りです。
構造 | 耐用年数 |
---|---|
木造 | 22年 |
軽量鉄骨 | 27年 |
重量鉄骨 | 34年 |
RC | 47年 |
例えば、築15年、延べ床面積が150㎡の木造住宅、再調達価格を15万円/㎡と仮定して売却価格を計算すると下記のようになります。
■15万円/㎡ × 150㎡ ×(22年−15年)÷ 22年 = 約715.5万円
一般的に、一戸建ての場合、土地の部分は取引事例比較法、建物の部分は原価法で算出しますが、売却したい不動産が農地や林地を造成して建設した物件であった場合、周辺の取引事例を元にして、造成工事の費用を計上して土地の価格を査定する場合もあります。
収益還元法
収益還元法はその不動産が将来、どのくらいの利益を生み出すのか、その収益力を元にして不動産を査定する方法です。主に、アパートなどの投資不動産の査定はこの方法で行われます。
収益還元法はさらに『直接還元法』と『ディスカウントキャッシュフロー法(DCF法)』と 呼ばれる方法に分けられています。
『DCF法』は将来得られる利益と売却価格から現在の価値に割引くという査定方法で、こちらの方がより、正確な査定額を算出することができるのですが、計算が複雑であるため、多くの不動産会社は直接還元法で売却価格の査定を行っています。
『直接還元法』は売却したい不動産が生み出す1年間の収益を、周辺地域の類似した物件の還元利回りで割り戻して、不動産の価値を算出します。
基本的な計算方法は下記のようになります。
■直接還元法 = 年間家賃収入 ÷ 還元利回り × 100
査定を依頼する前に確認しておく4つのポイント
不動産の査定方法を理解したところで、それでは具体的に不動産を売却するとなった際に、売主はどのような点に気をつければいいのか、注意すべき4つのポイントを押さえておきましょう。
1.必要な書類を揃えておく
不動産の査定をスムーズに進めるには、査定を依頼する前に必要な書類が揃っているか確認し、手元にないものがあれば事前に入手しておきましょう。
主に必要になる書類の一覧は下記の通りです。
- ・固定資産税納税通知書
- ・物件の正確な住所・建築確認・間取りなどの資料
- ・測量図(土地の大まかな位置や形状、境界線を表した図面)
これらの書類は査定の際に揃っていると、より正確な査定額を算出することができます。
不動産に関する書類はあればあるだけ、査定やその後の売却活動に使用することができますので、不動産の購入時に受け取った書類や契約書、マンションのパンフレットなどもあれば心強いでしょう。
不動産の売却時に必要な書類について、より詳しく確認したい方は下記のリンクより、特集記事をご覧ください
関連リンク|売却前に知っておくべきこと【売却に必要な書類】
2.不具合・修繕が必要か確認する
不動産を売却する際には物件の不具合や修繕状況を買主に伝えなくてはなりません。
売却したい不動産が本来、有していなければならない品質や性能を満たしていない場合、これを瑕疵(かし)といいます。
住宅設備の不具合や瑕疵は不動産の価格価値を下げ、正確に伝えておかなければ後々にトラブルの原因となる場合があります。
不具合や瑕疵を契約時に明文化せず、秘匿していた場合、売主は契約の不適合責任を負い、買主から修繕や減額請求を求められた際には応じなくてはなりません。
こうした住宅設備の不具合や瑕疵の有無は素人目にはわかりにくい場合もありますので、築年数が経っている不動産の売却をする場合は事前に不動産会社に相談し、専門の業者に調査を行ってもらうと良いでしょう。
瑕疵や建物状況調査について、詳しく知りたい方は下記のリンクより、参考にしてみてください。
関連リンク|売却前に知っておくべきこと【インスペクション(建物状況調査)】
3.リフォームやハウスクリーニングはするべきか検討する
住宅設備の不具合や瑕疵の確認と並行して、大掛かりな改修リフォームや簡単なハウスクリーニングをする必要があるかを検討することも大切です。
売却する不動産の見た目が良かったり、瑕疵の修繕などが住んでいる状態であれば、不動産のセールスポイントとなり、より良い条件で買主が見つかる可能性が上がります。
ただ、当然のように、リフォームやハウスクリーニングには費用が掛かりますし、例えば、壁紙を張り替えたとして、買主がその壁紙を気に入らなければ購入後に張り替えてしまうかもしれませんので、無駄な出費を増やしてしまうことになります。
リフォームやハウスクリーニングをするべきか、するのであればどのくらいの規模で、費用や期間はどのくらい掛かるのか、そういった判断は売主の独断ではなく、不動産会社に相談をして、プロの目で判断してもらうと良いでしょう。
4.土地や一戸建ての場合、境界線を明確にする
土地や一戸建ての売却の際に、トラブルが起こりやすいのは境界線についてです。
査定後に調べることもできますが、境界線の調査は土地家屋調査士に依頼するため、測量に費用と時間が掛かります。
査定を依頼する前に、隣地との境界線が明確であるか、問題となる可能性がある部分はないか、把握しておくことで、査定に掛かる時間を短縮することができるでしょう。

査定はあくまで査定、売却価格とは異なる場合も
複数の不動産会社に査定の依頼をすると、不動産会社によって査定額が異なるため、ついより高額の査定額を提示している不動産会社を選びたくなってしまいますが、査定額はあくまで、仮の価格ですので、その値段で売れるという保証はありません。
実際の売却価格は売主の希望価格を下回るケースも少なくないため、複数の不動産会社の査定額を見て、がっかりしてしまうことも多いでしょう。そんな時に他社よりも高額の査定額を提示されたらつい、その会社を選んでしまいたくなるものです。
しかし、明確な根拠がない高額の査定結果は不動産会社が媒介契約を結びたいがための策略、という可能性もあります。
そんな時は、どういった観点からその査定額になったのかを確認し、納得できる内容であるかを見極めてから、正式な依頼をすることが肝要です。
どうか、売却を焦って悪質な不動産会社と契約を結ばないように、注意してください。
不動産会社の選び方について、より詳しく知りたい方は下記のリンクより特集記事をご覧ください。
関連リンク|コラム【不動産売却に強いおすすめの会社の選び方!不動産会社の選び方を解説!】