売却に関わる税金
不動産を売却するときに気になるのが売却にかかる税金。所得税や、住民税の他に4種類、合計6種類の税金を納める必要があります。
売却によって利益が出た場合は確定申告をする必要もあるため、前もって把握し、事前に知識を備えておきましょう。
不動産売却にかかる税金は全部で6種類
まず、不動産売却にはどのような税金がかかるのか、見ていきましょう。
不動産の売却時に発生する税金は『利益にかかる税金(=譲渡所得税)』と手続きなどにかかる『その他の税金』の2種類に分類することができます。
利益にかかる税金 | 所得税 | 売却益にかかる。売却の翌年2から3月に納税する |
住民税 | 売却益にかかる。売却の翌年6月頃に納税する | |
復興特別所得税 | 2013年1月1日から2037年12月31日に発生した売却益にかかる | |
その他の税金 | 印紙税 | 契約書に貼る収入印紙にかかる |
登録免許税 | 不動産の名義変更にかかる税金 | |
消費税 | 不動産会社への仲介手数料などにかかる税金 |
不動産売却の利益にかかる税金
不動産売却の利益にかかる税金は3種類です。これらはまとめて『譲渡所得税』と呼ばれています。譲渡所得とは、不動産売却によって生まれた利益のことです。
- ・所得税:個人の所得にかかる税金
- ・住民税:都道府県や市区町村に収める税金
- ・復興特別所得税:東日本大震災からの復興のために必要な財源を確保するための税金
(2013年1月1日から2037年12月31日まで課税されます)
譲渡所得税の税率はその不動産の所有期間の長さによって、下記のように異なります。
項目 | 所得税 | 住民税 | 復興特別所得税 | 合計 |
---|---|---|---|---|
短期譲渡所得 (所有期間5年未満の場合) | 30% | 9% | 0.63% | 39.63% |
長期譲渡所得 (所有期間5年超の場合) | 15% | 5% | 0.315% | 20.315% |
所有期間は売却した年の1月1日時点を判断基準にするので、注意が必要になります。
上記の表の通り、所有期間が5年以下だと税率が高くなりますので、売却時期を決める際は慎重に検討しましょう。
これらの譲渡所得税は利益にかかる税金のため、不動産売却によって利益が出なければ課税はされません。
譲渡所得とは、不動産を売却した代金から不動産を購入する際にかかった費用(=取得費用)や売却にかかる費用(=譲渡費用)を引いたものであり、その求め方はこのようになっています。
譲渡所得=※譲渡価格−(譲渡費用+取得費用)
※譲渡価格には『不動産の売却価格』の他に『固定資産税の精算額』『都市計画税の精算額』が含まれます。
■ 譲渡費用とは?
譲渡費用とは、不動産売却にかかった費用のことです。
不動産売却時の仲介手数料や収入印紙代、建物の取り壊し費用や測量費用などがこれにあたります。
■ 取得費用とは?
取得費用とは、不動産の購入時にかかった費用のことです。
譲渡した不動産の購入代金や購入手数料、購入後の設備費や改良費などを合計した金額になります。
また、不動産の中でも一戸建てやマンションなど、建物の場合は期間の経過とともに価値が減少する資産ですので『減価償却費用相当額』を差し引いて取得費を計算します。
減価償却費の計算方法
減価償却費=取得価格×0.9×償却率×経過年数
また、償却率は建物の建築方式や使用用途により異なります。
建築方式 | 非事業用(マイホーム等) | 事業用(賃貸マンションなど) | ||
---|---|---|---|---|
構造 | 耐用年数 | 償却率 | 耐用年数 | 償却率 |
木造 | 33年 | 0.031 | 22年 | 0.046 |
軽量鉄骨 | 40年 | 0.025 | 27年 | 0.038 |
鉄筋コンクリート | 70年 | 0.015 | 47年 | 0.022 |
譲渡所得税には『確定申告』が必要になります。
譲渡所得が出たかどうかに関わらず、不動産を売却した翌年の2月16日から3月15日までの期間に譲渡所得の確定申告をしなくてはなりません。
不動産売却で得た譲渡所得は『分離課税』にあたるため、給与所得とは別に計算し、申告する必要がありますので、サラリーマンなどで確定申告を行ったことない方も、不動産売却をした際は確定申告をしなくてはいけませんので、注意しましょう。
その他の税金
不動産売却時には上記のほかに、手続きなどを行うために必要な税金があります。
■ 印紙税
一定額以上の契約書や領収書といった文章にかかる税金です。
不動産売却の場合、売買契約書に収入印紙を貼り、消印を捺す必要があります。
印紙税の金額は不動産の売買金額によって下記のように定められています。
売買金額 | 税額 |
---|---|
100万円超〜500万円以下 | 1,000円 |
500万円超〜1,000万円以下 | 5,000円 |
1,000万円超〜5,0000万円以下 | 10,000円 |
5,000万円超〜1億円以下 | 30,000円 |
1億円超〜5億円以下 | 60,000円 |
※税額は令和6年3月31日までの軽減税率が適用されています
■ 登録免許税
ローンが残っている不動産を売却する場合、物件の引き渡し前にローンを完済し、抵当権を外す必要があります。
抵当権はローンを完済しても自動的に抹消されるものではないため、債務者が手続きを行って抹消しなくてはいけません。
この手続きを行うために登録免許税がかかります。
抵当権抹消登記にかかる登録免許税の税額は不動産の価格価値に関わらず、1つあたり1,000円と定められています。
しかし、一軒家の場合、土地と建物は別々の不動産として扱われますので、それぞれに1,000円ずつ課税されることを覚えておきましょう。
■ 消費税
不動産売却にかかる費用のうち、『不動産会社に支払う仲介手数料』『司法書士に支払う手数料』『融資手続きの手数料』には10%の消費税が発生します。
また、居住用ではなく、投資用(事業用)のマンションなどを売却した場合も消費税の課税対象となるので、気をつけましょう。
ここまで、不動産売却にまつわる税金についての説明をしてきましたが、これらの知識を頭に入れた上で不動産売却はうまく進めていきたいものです。
売却の際にどのような税金が発生し、譲渡損益を出さないためにはいくらで売却するのが理想的なのか、所有している不動産は減税特例の対象になるのか、事前に金額のシミュレーションをし、納得のいく不動産売却にしましょう。